本研究の野外調査は1994年1月22日から2月20日にかけて屈斜路湖東岸の調査地区で実施した。屈斜路湖は1月22日に全面が結氷したが、その直後に例年にない大量の降雪があった。その後も何度か降雪が繰り返されたが、これらの降雪による積雪層の影響は、(1)著しい雪氷の発達、(2)真氷の発達不良、(3)湖氷移動量の減少(調査期間に陸方向に約1.4m移動)、(4)湖氷縦断形の不規則化、(5)乗り上げつつある氷板の下部に堆積物が付着することを妨げること。など多岐に及んだ。このような状況の下で二次元弾性理論に合致する湖氷縦断形は出現せず、湖氷の乗り上げに伴う堆積物の運搬は、小規模にならざるを得なかった。 室内実験については、圧縮強度試験用試料の採取を1994年2月から3月にかけて、屈斜路湖と塘路湖で行った。これらの試料は実験室に持ち帰り、整形した後、実験を行った。その結果湖氷の最大圧縮強さについては、全体的に(塘路湖の試料)>(屈斜路湖の試料)となり、ヤング率については(屈斜路湖の試料)>(塘路湖の試料)という傾向が明かになった。また両方の湖とも、一定の時間を経過した後に採取した試料については、最大圧縮強さ、ヤング率ともに値が小さくなる傾向がみられた。これは春の解氷に向かって湖氷の強度が次第に劣化しつつあることを示しているものと考えられる。 今回の野外調査で得られた雪氷と真氷の発達過程に関する研究成果や室内実験によって得られた成果は、今後継続する予定のこの研究にとって極めて有益な情報の提供をすることになろう。
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