幾何学習ソフト「カブリ」を使用した7時間の授業のビデオ記録と授業中の観察記録、そのときに書かれたワークシートを元に分析した結果、以下のような測定と図を動かす活動から問題点が浮かび上がってきた。 A、無駄な所もすべて測定してしまい、何をしてよいかわからない場合がある。 B、測定誤差のために、図形の性質に気がついても一般化できない場合がある。 C、図を動かしていると、当たり前に見えて、その図形の性質と気がつかない場合がある。 D、測定値を使って証明を書き、証明にならない証明で証明が出来たと思ってしまう場合がある。 分析1ででた結果をもとに、特に、証明問題にソフトを使用した場合、問題解決における生徒のストラテジーを分析した。その結果、問題によって、「測定値がいつも同じ性質を示しているから」と証明に書いてしまう場合と、「測定値だけでは証明とはいえない」といいながら、2辺が等しいことを証明するとき、直接測定して等しいという生徒はいないが、使う合同条件には測定値を使っている。本人は測定値から証明していると気がつかない場合がある。 コンピュータを使用して中学校で証明問題を行なった場合、測定値が証明の際の生徒の思考を非常に助けているが、論理的な証明を行なうことは、依然困難である。最近「証明は死んだ」(J。ホーガン、日経サイエンス1993年12月)という衝撃的な題で、形式的な数学用語で埋め尽くされた証明より、説得力をもつ証明を考えている数学者がいるし、証明ができるのでは」と問題提起されている。中学校の図形教育において、証明そのものを考え直すことと、測定値を使った場合に、論理的に考える力を育てる指導方法を考えることが今後の課題である。
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