本研究では、何らかの「動き」の要素が中心的役割を果たすような語感は、コンピュータ利用によって顕在化する意義が認められ、教育現場で実用にも耐えうるCAI教材を開発することが可能であることを示そうとした。 本研究1年度目には、語感の顕在化CAI教材の作成過程で、特に2つの問題が明らかになった。(1)学習効果が期待できるビデオ映像の撮影と編集、またビデオ映像とコンピュータ上に制作する画像の統合が難しかった。(2)市販のグラフィック・ソフトでは色を使って演示まではできるのだが、シミュレーションが極めて困難である一方、マッキントッシュに装備されたハイパーカードでは、シミュレーションまで可能なのだが、色が使えないという難点があり、色は未使用で教材化を進めざるを得なかった。 語感の顕在化においては、原則的な実現性を確認するだけでは不十分で、その質的な完成度が教育効果に決定的な意味を持つ。したがって、教材の数を制限しても、一つ一つの完成度を高めることを優先する必要があると思われる。そこで、2年度目はビデオ映像とコンピュータ画像の統合が容易にでき、シミュレーションと色使用が可能なオブジェクト・オーサリング・ツール・ソフトの「オ-サウェア」を使用して、専門家の援助も得つつ、すべての教材項目を作りなおした。その中で、「副詞『もう』の語感」と「『あげる』と『くれる』の語感」は、教育効果の観点から(統計的検定も含め)現場使用にある程度耐えられるレベルに達した。 今後の課題としては以下の3点が挙げられる。(1)プロの俳優、カメラマンを使って、ビデオスケッチの質を高め、教材の完成度を高める。(2)全教材の教育効果の統計的検定を実施する。(3)LANを使った授業形態にも対応できる教材の開発にも力を入れる。
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