放電空間中バックミンスターフラーレンの自己形成過程の研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05808039
• 研究機関: 静岡大学
• 研究代表者: 三重野 哲 静岡大学, 理学部, 助教授 (50173993)
• 研究分担者: 桜井 厚 静岡大学, 理学部, 助教授 (70021938) ; 浅野 勉 静岡大学, 理学部, 助教授 (10021940)
• キーワード: フラーレン / アーク放電 / 自己形成過程 / 中空炭素分子 / 連続合成 / ハイヤーフラーレン / 原料リサイクル / チップ状炭素

研究概要

1.放電の自動制御装置を開発し、放電条件を自動的に一定にすることができた。
2.C_<60>の効率合成の第1条件として、いかにして炭素正電極から、多量の炭素原子を蒸発させるかが重要であることが分かった。つまり、放電電流、放電電圧により、アークスポットの温度を上げる事と、炭素表面の非平衡エネルギーによる炭素クラスターの発生を減らす事が重要である。
3.C_<60>の効率合成の第2条件として、蒸発した炭素原子がいかにして頻繁に炭素原子やヘリウム原子と衡突するかが重要であることが分かった。この合成反応はヘリウム対流中での気相反応であるので、炭素蒸気が容器壁に付着するまでの時間中に、炭素原子同志の衝突時間が十分ないと合成ができない、またヘリウムとの衝突によるアニール効果がないと、対称性の良い分子まで成型されず、非球形のすすとなってしまう。
4.C_<60>の効率合成の第3条件として、実験装置の不純物制御が重要であることが分かった。酸素や水素を含む不純物が放電空間に存在すると、炭素がそれらの原子と結合してしまい、合成率が大幅に減少する。
5.これらの結果を基に、新型フラーレン自動連続合成装置を開発し、炭素原料をリサイクルしたC_<60>合成に成功した(日経新聞1/15と日本工業新聞1/19の記事となった)。
6.低電流の静かな放電で、C_<70>(高次フラーレン)の含有率が増えることが、吸光分析法により分かった。
7.質量分析法、対流制御法による自己形成過程の測定、各フラーレンへの分岐過程の研究を6年度に予定している。

研究成果

• [文献書誌] 三重野 哲: "閉鎖容器中アーク放電によるバックシンスターフラーレン(C_<60>,C_<70>)の合成と結晶成長" プラズマ・核融合学会誌(論文). 69. 793-800 (1993)
• [文献書誌] T.Mieno: "Automatic Production of Buckminsterfulkrenes by Use of an Arc Discharge in a closed chamber" J.Phys.Soc.Jpn.62. 4146-4147 (1993)
• [文献書誌] T.Mieno: "Continuous Production of fulkerenes by Evaporation of Carbon Powder and Carbon Chips in an Arc Discharge" Proc.3rd IUMRS Int.Conf.Advanced Materials,Tokyo,1993. (出版予定). P.4 (1994)
• [文献書誌] N.Sato: "Production of C_<60> Plasma." Proc.NATO Advanced Res.Workshop,France,1993. (出版予定). (1994)
• [文献書誌] Y.Miyauchi: "Measurement of Production Rate of C_<60> in Case of an Arc Discharge in a Closed Chamber" Proc.6th Sympo.Plasma Sci.for Materials. SPSM-6. 107-112 (1993)
• [文献書誌] T.Mieno: "Ionization of Buckminsterfullerene C_<60> in a Noble Gas Plasma" Rep.Faculty of Science,Shizuoka Univ.28. 25-29 (1994)
• [文献書誌] 三重野 哲: "第6回C_<60>総合シンポジウム講演要旨集" 日本化学会C_<60>研究会, 258(4) (1994)