TRUなどの共鳴核種と中性子との反応率の解析を行うための基礎研究として、共鳴核種である金の熱外中性子エネルギー中性子放射化実験を、^<241>Am-Be中性子源を用いた黒鉛設備を用いて行い、その放射化量を平成5年度に設備した大容量ウェル型Nal(Tl)シンチレーション検出器と測定装置を用いて放射化量を測定した。特に厚さ20〜50μmの箔を10〜20枚重ね合わせた試料を照射することにより、箔内部での共鳴核種と中性子との反応率分布に着目して詳しい実験データを測定した。さらに、金と共鳴が近接した銀、タンタル、インジウムなど別の共鳴核種が存在する場合に、金箔の内部での反応率がどのように影響を受けるかについての詳細な測定も行った。得られた実験データを元に、詳細エネルギー群計算法、エネルギーの縮約を行った多群計算法、およびマルチバンド法を用いて反応率分布の解析を行った。その結果、共鳴核種の金箔部では中性子の空間的自己遮蔽の効果のために反応率が大きく落ち込むこと、さらに共鳴が近接した場合に箔の内部での反応率が大きく影響を受けること、その解析を行う場合、多群法では通常の計算では詳細群とされているような群数であっても反応率分布の精度を上げることが難しいものの、マルチバンド法では比較的少ないバンド数で良い精度の解析を行えることなどがわかった。しかし、金と銀のように非常に近接した共鳴が存在する場合には計算の精度は悪くなること、両手法ともにタングステンのような吸収ではなく散乱の共鳴が重要である場合には反応率の計算精度が悪くなることがわかった。
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