研究概要 |
LiMn_2O_4あるいはMg_2MnO_4を前駆物質とし、それらからLiあるいはMgを抽出することにより得られる2種の選択的Li吸着剤(それぞれMnO_2(Li)、HMnO(2Mg)と略記)に関し、合成条件、Li選択吸着性とLi同位体効果の関連を研究した。以下に各々の吸着剤につき、得られた結果をまとめる。 MnO_2(Li):Li抽出剤に(NH_4)_2S_2O_8を用いるとMnの溶解率を1%以内に抑えながら、高いLi抽出率を達成できる。最適調製条件は、固液比10gdm^<-3>、抽出回数2回、抽出温度90℃、抽出時間1h,(NH_4)_2S_2O_8濃度0.5Mである。調製されたMnO_2(Li)のイオン選択性は、調製条件にあまり依存せず、Liに対し特異的に大きい(分配系数値として4000cm^3/g以上)。Li吸着量は4.5〜5.7meq/gと吸着剤の調製条件により若干異なり、調製時のMn溶解率と緩やかな正の相関性を示す。また、正の温度依存性を示す。Li同位体分離係数については、Mn溶解率と緩やかな負の相関性を示し、25℃において最大で1.014である。また、温度に対しては負の依存性を示す。 HMnO(2Hg):MnO_2(Li)の場合と同様、Mg抽出剤として(NH_4)_2S_2O_3が有効である。Mn溶解率を1%以下に抑えながら、Mg抽出率を95%以上にすることができる。HMnO(2Mg)の特性は、調製時のMg抽出率に強く依存し、特に抽出率50%を境として大きく変化する。Li選択性、Li吸着量ともMg抽出率の増加に伴って増大するが、Li同位体分離係数は小さくなる。25℃におけるLiの分配係数、Li吸着量、Li同位体分離係数の最大値はそれぞれ150000cm^3/g、2.26meq/g、1.016である。 MnO_2(Li)、HMnO(2Mg)とも、市販のイオン交換体に比べ10倍程度大きな分離係数値を示し、Li同位体分離剤としての基本特性を有していることが明らかである。しかしそれらが優れた同位体分離剤となるためには、優れたカラム充填剤である必要があり、今後検討する必要がある。
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