研究概要 |
昨年度に引き続きLiMn_2O_4を前駆物質とする吸着剤(MnO_2(Li))及び本年度新たに始めたLiSbO_3よりLi^+をH^+とイオン交換することにより得られる単斜晶アンチモン酸(HSbO_3)につき、それらのキャラクタリゼーション並びにリチウム同位体選択性を調べた。 MnO_2(Li):本年度は前駆物質を合成する際のLi/Mn量比(=0.4,0.5,0.7,0.8)並びに焼成温度(=400,600,850℃)が調製されたMnO_2(Li)の示すリチウム同位体選択性に及ぼす効果について検討した。その結果、どの温度でも一般にLi/Mn比が大きくなるとリチウム同位体効果が小さくなることがわかり、同位体効果とMnO_2(Li)の結晶格子の歪との相関が示唆された(歪が大きくなると同位体効果が小さくなる)。これは、吸着剤の示すイオン選択性からも支持される。また、Li/Mn比一定の場合、実験条件の範囲内で、同位体効果は前駆物質の焼成温度にあまり依存しないこと、すなわち、吸着剤の結晶性の高低にはあまり依存しないことがわっかた。リチウム同位体分離係数は25℃において、最大1.0092であり、昨年度報告した最大値1.014(本年度のものとは調製条件が異なる)は得られなかった。なお、いずれの条件で調製されたMnO_2(Li)もアルカリ金属、アルカリ土類金属の中でリチウムに対して高い選択性を示した。 HSbO_3:五塩化アンチモンと水酸化リチウムから合成したアンチモン酸リチウムよりリチウムを抽出することにより単斜晶HSbO_3を調製した。イオン選択性としてはMnO_2(Li)以上に高いリチウム選択性を示した。分離係数は各種含リチウム水溶液に対して25℃で1.020-1.025、90℃で1.011-1.015であり、マンガン酸化物系吸着剤よりかなり大きく、この点では、有望なリチウム同位体分離剤の候補であるといえる。しかし、リチウムの脱着が難しく、今後の更なる検討が必要である。
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