糖タンパク質糖鎖脱離反応がタンパク質の新しい翻訳後修飾過程の一つとして位置付けられることを証明し、また、この糖鎖脱離現象の普遍性を実証する目的で研究を行い、本年度は、主として糖鎖を脱離する酵素であるペプチド:N-グリカナーゼ(PNGase)の分布、性質について以下の成果が得られた。(1)マウス結合組織由来線維芽細胞(L-929)から精製されたPNGase(L-929 PNGase)の糖結合活性:-既知の植物、細菌由来のPNGaseと異なる性質の一つとして、L-929 PNGaseには糖鎖結合活性が存在することが明らかとなった。(2)培養細胞および臓器・組織におけるPNGase活性の時間的、空間的な存在分布:-まず、プロテアーゼ活性等が含まれる粗画分を用いて確実に簡単にPNGase活性を検出・同定する方法を開発し、その方法を用いてマウス、ラット、ヒト、ウシ、ブタ、ニワトリの臓器にも酵素活性の存在が明らかとなった。また、8周令マウスにおける臓器分布を調べた結果、酵素活性の程度は異なるがどの臓器にも活性が認められた。ニワトリ胚の発生過程における脳のPNGase活性の変化を調べた結果、段階特異的に活性の発現量が変化することが明らかとなった。(3)ブタ脾臓に存在する可溶性酵素の部分精製と性質:-ブタ脾臓の可溶性PNGaseには、分子量と至適pH等の性質が異なる少なくとも4種類のPNGaseが同定され、PNGaseファミリーというべき酵素群の存在が示唆された。(4)哺乳動物PNGaseの内在性基質の同定:-ニワトリ卵白アルブミンの生合成中間体の一つとして検出される糖鎖を2本結合するhighly glycosylated型を完成型分子へと変換する過程に関与する輸卵管局在PNGaseが同定された。
|