ニワトリ肝癌由来の細胞株LMHは、DHBVDNAをトランスフェクションすると効率よくDHBVを増殖する細胞であるがDHBV粒子に感染しない。我々は、DHBV感染におけるgp180の機能を探るため、LMH細胞にselection markerとしてneo geneをもち、かつRSV promoterの下流にgp180DNAを挿入した発現プラスミドを導入して、gp180発現細胞株を樹立した。DHBV感染実験は、これらの細胞を使って種々の条件下で行った。DHBV粒子はgp180発現細胞株によく吸着するが、これら細胞でのDHBVの増殖は培養14日後も認められなかった。gp180は、DHBV感染の初期、細胞表面へのウイルス粒子の吸着に関わっているものと考えられる。 DHBV感染過程におけるgp180の機能を明かにする上で、抗gp180抗体によるDHBV感染阻害実験は重要である。DHBVpreSはgp180の3番目のカルボキシペプチダーゼドメインに結合することがわかったので、この領域をGSTとの融合蛋白質として大腸菌より大量に得、それを抗原としてラビット及びマウスを用い抗gp180抗体を各種作成した。しかし、まだDHBVpreSとgp180の結合を阻害するような中和抗体は得ていない。 今回得られた抗gp180モノクローナル抗体を使ったWestern解析、ニワトリgenomicDNAのSouthern解析からニワトリgp180の存在を示唆する結果を得た。gp180のカルボキシペプチダーゼドメインがtriplicateしたユニークな構造は、生物種を越えて普遍的に存在しているように思われる。また、抗gp180抗体を使ったWestern解析からgp180は、各ドメインがプロセッシングされることなく機能しているものと推察された。各ドメインの酵素活性については、現在検討中である。
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