ダックB型肝炎ウィルス(DHBV)エンベロープ蛋白質(DHBVpreS)と特異的に結合するダック由来の新規カルボキシペプチダーゼgp180の全アミノ酸一次構造を推定できた。gp180は、1389個のアミノ酸からなる膜結合性糖蛋白質であり全アミノ酸配列を3分割するようにカルボキシペプチダーゼドメインを配列している。gp180全体のおよそ10%が細胞表面に局在する。 作成した各種gp180欠失変異体とDHBVpreSとのbinding assayから、この結合ドメインはgp180C末端側、3番目のカルボキシペプチダーゼドメインにあることがわかった。また各ドメインの酵素活性については、現在検討中である。 DHBV感染におけるgp180の機能を探るため、gp180導入細胞株を樹立しDHBV感染実験を行った。DHBV粒子はgp180発現細胞株ひよく吸着するが、培養14日後もDHBVの増殖は認められなかった。gp180は、DHBV感染の初期、細胞表面へのウィルス粒子の吸着に関わっているものと推察される。 DHBV感染過程におけるgp180の機能、gp180の存在様式を明かにする目的で、抗gp180抗体を各種作成した。まだDHBVpreSとgp180の結合を阻害するような中和抗体は得ていないが、抗gp180抗体を使ったWestern解析、ニワトリgenomic DNAのSouthern解析からニワトリgp180の存在を示唆する結果を得た。gp180のカルボキシペプチダーゼドメインがtriplicateしたユニークな構造は、ダックに特異的なものではなく生物種を越えて普遍的に存在しているように思われる。また、抗gp180抗体を使ったWestern解析からgp180は、各ドメインがプロセッシングされることなく機能しているものと推察された。
|