我々はミオシンATPase光化学的切断で得た知識をアクチンへ適用してみたいと考えた。立体構造が解明されてアクチンのドメイン内部に重要なヌクレオチド結合部位が明かとなったからである。アクチンはなぜ重合していないとミオシンATPase活性を活性化できないのか、という疑問はアクチン分子間の結合について良く知らなければ答えられない。さらにミオシンがアクチン上を滑るためにはアクチン分子のどのような表面と相互作用する必要があるのか、については両タンパク質の接触の生理的条件での有り様を知る必要がある。これらの問題に答えるひとつの道はアクチンまたはミオシンの機能部位を特異的に改変し機能の変化を調べることである。10mMという比較的高濃度のバナジン酸の存在下でGアクチンが光化学切断された。分子量42kDaのアクチンから22kDaと20kDaのふたつのフラグメントが生じ、蛍光標識の結果から前者がアクチンのアミノ末端由来であることが判明した。この光切断アクチンの重合性は極めて低くかった。切断部位のアミノ酸残基を明らかにするために20kDa成分のアミノ酸配列分析を行ったがEdman分解できなかった。これは光化学切断部位に遊離のアミノ基が出ていないことを示すものと考えられる。そこでこの切断点を一端とする小ペプチドをプロテアーゼ処理によって得た後それらのアミノ酸配列および組成分析から切断部位を決定を行い、Fアクチンにおけるモノマー間の接触領域に切断点があると思われる結果を得た。これらの実験で分析試料の凍結保存に本補助金で購入したディープフリーザーが大変役だった。
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