タンパク質の構造形成過程の研究から熱ショックタンパク質の大腸菌シャペロニンGroEがタンパク質の構造形成過程で重要な働きをすることが明らかになってきた。GroEは、Lサブユニット(分子量約6万)が環状七量体が二つ重なった十四量体を、Sサブユニット(分子量約1万)が七量体を形成して二十一量体として機能発現すると考えられている。申請者は、大腸菌のシャペロニンGroEの機能を立体構造から解明するためにX線構造解析を進めてきた。定説ではGroEの分子は60kDaのLサブユニット14個と10kDaのSサブユニット7個から成る分子量約90万の巨大分子であるため結晶化が容易でない。そこで、大腸菌シャペロニンGroEの構成成分であるGroELとGroESを分離し、かなりの純度で精製し得た前者の結晶化を試みたところ、15%PEG4000を沈滅剤とするハンギングドロップ蒸気拡散法により形の違った二種類の結晶(Type1、Type2)が得られた。この時、結晶化温度は最初一定期間4℃に保った後に25℃に変更してゆっくり結晶が成長するようにした。Type1の結晶は、一辺が0.2mmのサイコロ状結晶で沈澱剤を含む50mM酢酸緩衝液(pH5.5)に対して1.5%蛋白質を含む溶液ドロップを3〜6ケ月かけて蒸気平衡化させて得られた。またType2は、0.2x0.3x0.1mm程の板状結晶で、同じ濃度の沈澱剤を含む50mM Tris-HC1緩衝液(pH7.5)に対して0.65%蛋白質を含む溶液ドロップを3〜6ケ月かけて蒸気平衡化させて得られた。高エネルギー物理学研究所放射光実験施設において放射光から得られる単色X線をType2の結晶に当てると5A分解能までの回析像が得られた。現在、このX線回析像を詳細に解析して結晶学的パラメータを決定し、GroELサブユニット数および会合状態を推定する努力中である。更に詳細なX線結晶解析を行い、GroEのE/Sサブユニット会合形態の形態機構を明らかにしたい。
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