研究概要 |
大腸菌K-12株で発見したRT遺伝子を含むDNAをプローブとしてサザンブロッテイング法で調べ、大腸菌K-12株には1コピーの、C株には少なくとも5コピーのRT遺伝子が存在し、大腸菌B株、S.dysenteriae,S.typhimurium,K.pneumoiae,S.marcescens,P.mirabilis,Ps.putidaには存在しないことを明らかにした。C株よりRT遺伝子を含む2kbのDNA断片をクローニングし、塩基配列を決定してK-12株との比較を行った結果以下のことが明らかになった。1)K-12株ではRTは322個のアミノ酸より構成されていたが、C株においては499個のアミノ酸より構成されておりN-末端側の322個のアミノ酸配列にはK-12株と同じである。2)K-12株ではRT遺伝子の下流にIS5が連結して存在しているが、C株ではIS629が連結して存在している。C株においてはRT遺伝子とIS629との間にはYeast(S.cerevisiae)のミトコンドリアのcytochrome oxidase intron2に存在する45bpと相同な塩基配列が存在している。我々の発見したRT遺伝子は系統樹上では藻類や真菌類のRT遺伝子と近いことを考えるとこの領域におけるゲノムのモザイク化は遺伝子の進化を示すものとして興味深い。K12株でRT遺伝子を含む領域より下流の塩基配列を決定し、解析の結果IS5の下流域にミトコンドリアのイントロンa1,a2や肝炎ウイルス、ショウジョウバエのコピアなどで見つかっているRT遺伝子に関連したDNAエンドヌクレアーゼ領域で強く保存される配列の存在が明らかになった。 RTの活性を明らかにするために、RT遺伝子の存在が明らかになったK-12株、C株およびRT遺伝子を持たないB株の粗抽出液を用いたり、T7プロモーターを用いてRTの多量発現系の構築、グルタチオンSトランスフェラーゼとの融合遺伝子の作成などRT活性の測定を試みたが検出できなかった。 E.coli C株においてコピー数が多いことはC株のRTがレトロトランスポゾン上にあることが考えられる。トランスポジションアッセイ用ベクターを用いてC株のRTがトランスポジションするか否かを検討したが有意義な結果は得られなかった。
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