研究概要 |
血小板の産生機序ならびに産生調節機序が明かにされていないのは巨核球の不足があげられる。この一つのアプローチは巨核球のモデル系としての巨核球細胞株の樹立である。申請者は8年前に巨核芽球細胞株(MEG-01)を樹立し、これが血小板様粒子を産生することを見つけた。しかし、産生量が非常に少なく、粒子の機能を調べることが難しい。そこで、本研究では分化誘導因子による粒子の産生増強を検討した。 血小板様粒子としての同定は【.encircled1.】大きさが3〜5mumであること、【.encircled2.】特徴的な細胞骨格(微小管)の存在、すなわち、微小管束が細胞の辺縁に輪状で存在すること、【.encircled3.】血小板特異抗原の糖タンパク質であるGPIIb/IIIaがあること、の3つの性質を持っていることで決めた。その結果つぎのことが明らかになった。他の細胞系の分化誘導に使われている物質、レチノイン酸、ジメチルスルホン酸、TPA,オカダ酸、シクロヘキサミンは粒子増強に何の効果も示さなかった。一方、DNA合成を阻害する物質、アフィデコリン,BudR、FudR、ヒドロウレア、mAMSAでMEG-OIS(MEG-01の亜株)を2日間培養すると、5〜15倍の粒子の増大が観察された。そのうち、0.2mug/mlアフィデコリンで3日間培養することが最もよい効果を示した。さらに、アフィデコリンによる血小板様粒子産生の増強はMEG-01のような巨核球系細胞株に特異的な現象で、培養株HL-60、線維芽細胞BALB/C3T3では観察されなかった。また、本研究で電子顕微鏡により、粒子の表面形態(走査電子顕微鏡観察)、微小管の局在(透過型電子顕微鏡の観察)で血小板と類似の構造が確認された。
|