ヒト巨核芽球細胞株(MEG-01)から血小板様粒子の産生増強とその同定

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05808068
• 研究機関: 大阪府立看護短期大学
• 研究代表者: 竹内 喜久子 大阪府立看護大学, 医療短期大学部臨床検査学科, 助教授 (60206943)
• 研究分担者: 小椋 美知則 愛知がんセンター, 血液化学療法科, 医長
• キーワード: ヒト巨核球系細胞株 / GMP-140 / MEG-01細胞株

研究概要

血小板の産生機序、産生調節機序の研究のおくれは、研究試料となる巨核球の不足によるところが多く、申請者は巨核球系のin vitro分化モデル系の確立をMEG-01細胞株を用いて検討してきた。
平成5年度は、MEG-01細胞から遊離される血小板様粒子の産生量の増強を種々の分化誘導物質で試み、DNA合成を阻害する物質が最もよい効果を示した。本年度は遊離された粒子の機能を調べるために、MEG-01細胞から培養液に遊離される粒子を遠心により分画し、粒子密度の高い分画を調製した。分画された試料はMEG-01細胞の混入はなく、ほとんど直径2〜4μmの球形、楕円体の粒子から成るが、円盤状、偽足をもった多角形のものも多少含まれた。粒子が生細胞かどうかはミトコンドリア内のみに存在する酸化還元酵素の染色によって確かめられた。血小板膜マーカーであるGPIIb/IIIa,GPIbの糖タンパク質をもち、さらに血小板のα-顆粒に存在するGMP-140タンパク質ももっていることが間接蛍光抗体法で示された。粒子が血小板の様な機能をもっているかどうかは、ADPやトロンビンによる粒子の活性化によって調べた。血小板は活性化すると、形態変化→粘着→放出→凝集の一連の反応をする。粒子のADP、トロンビンによる変化を走査電子顕微鏡で観察すると、偽足を出し、血小板のような形態変化をするものもあるが、それらは全体の1%にも満たなかった。血液凝固の基盤になる凝集も非常に少ないが、部分的には偽足をからませた粒子の大きな集まりが観察された。放出反応で、血小板内部にあるα-顆粒の膜タンパク質GMP-140が形質膜表面に出現するが、粒子でもADP、トロンビンによってGMP-140の出現の増強が蛍光染色で観察された。以上の結果から、MEG-01細胞は血小板と似た性質をもつ粒子を産生しうることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Kikuko,Takeuchi: "Enhanccment of Particle Release from Human Megakaryoblastic Leukemia Cells(MEG-01) by Inhibition of DNA Reprication" The Eight International Conference of the Society of Differentiation. 231-231 (1994)
• [文献書誌] Kikuko,Takeuchi: "Characterization of Particles Released from a Human Megakaryoblastic Leukemia Cell Line(MEG-01)" Asian Pacific J.Moi.Biol.Biotechnol.2. 277-277 (1994)
• [文献書誌] 竹内 喜久子: "造血の機構、巨核芽球細胞株からの血小板形成" 生体の科学(特集号). 45. 360-365 (1994)
• [文献書誌] 竹内 喜久子: "血小板の収縮タンパク質と収縮装置" 蛋白質核酸酵素. 38. 1475-1488 (1993)
• [文献書誌] 竹内 喜久子: "「研究室で役立つ細胞株」ヒト巨核球MEG-01" 生体の科学. 43. 487-487 (1992)
• [文献書誌] Kikuko,Takeuchi: "Production of Platclct-like Particles by Human Megakaryoblastic Leukemia Cell Line(MEG-01)" Exp.Cell Res.193. 223-226 (1991)
• [文献書誌] 竹内 喜久子 共著: "分子生理学ノート" 学会出版センター(4月出版予定), 300 (1995)
• [文献書誌] 竹内 喜久子 共著: "新生化学実験講座 血管(内皮と平滑筋)" 東京化学同人, 497 (1993)