研究概要 |
アフリカツメガエル純系(J)成体の背中には比較的大きな斑紋(スポット)がある.背中の模様を構成する色素細胞を見ると,表皮には小さな,そして真皮には比較的大きな黒色素胞があり,真皮には金色の黄色素胞が分布している.スポットの部分とそうでない部分とでは,黄色素胞の分布密度に違いがあったが黒色素胞では差がなかった.しかし,黒色素胞の細胞の大きさすなわち色素の拡散度はスポットの部分で明らかに大きかった.つまり,スポットは黒色素胞の拡散度と黄色素胞数の差で形成されている.初期幼生の背中中央部には色素細胞は分布していない.変態期が近づくと背中全体に黒色素胞が密集して分布するようになるが,スポットは全く観察されない.これらの黒色素胞は,体側部に分布していたものが分裂しながら移動してくることが,移植による細胞追跡実験から明らかになった.スポットは変態終了間際になって出現するが,はじめは黒色素胞だけで形成されることがわかった.変態終了後,黄色素胞がスポットを避けるように出現し,成体型の色素パターンとなる.J系では大きなスポットが少数,近縁種B系では小さめのスポットが背中を隙間なく埋めるように分布するのに対して,雑種第一代JBでは中間のパターンで,半優勢的に遺伝することがわかった.パターン形成機構の解析のためJJ皮膚をJB宿主に移植した結果,若い幼生に移植した場合には変態後に現れる背中の模様のパターンは宿主JBタイプであったが、変態が始まった個体での移植では移植された皮膚が持つJJパターンが出現するようになった。このことは背中の模様パターンは変態期に皮膚の下からの影響で皮膚に模様のプレパターンが描かれ,それが変態終了後になって目に見える形で発現してくることを示すと考えられる.今後の解析により背模様出現の分子・細胞学的メカニズムがいっそう明らかになることが期待される.
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