研究概要 |
昨年度と同様に、材料として大きな少数の斑紋からなる背模様を持つアフリカツメガエル純系(Xenopus laevis,JJ)とその近縁種で細胞マーカーをもち,多数の比較的大きな斑紋を持つ近交系(X.borealis,BB)、およびJJとBBの第一代雑種(JB)を用いて模様パターン形成の解析実験を継続した。JB個体ではJ系とB系の中間型の斑紋が形成される。受精から変態までの時間と斑紋パターンとの関係では、通常どおりの60日前後で変態した個体には比較的大きめのスポットが少数出現するが、変態が遅れたものでは変態までに要する時間に応じてスポットの大きさが小さくなるとともに数が増加する。このことは昨年すでに見い出していたが、今年度は飼育温度を若干上昇させることで変態を早めることにより、時間に応じてスポットの大きさが大きくなるとともに融合したりして数が減少することを見いだした。また、背中の斑紋パターンが出来上がる時期を決定するために、様々な発生段階の幼生での皮膚の回転実験を行ったところ、斑紋のプレパターンはstage56あたり形成されたものが変態期に可視化されることがわかった。プレパターンを支配すると考えられる筋肉層などからの働きかけの実体を探るための筋肉などの移植実験は、現在のところうまくいってない。色素細胞の移動の解析のためのJJ,JB間での部分皮膚キメラをつくる移植実験によって、斑紋のプレパターンが出来上がると考えられる幼生のstageに筋肉層の表面に分布していた黒色素胞が真皮および表皮に移動して侵入することがわかった。またフラクタル解析を用いたコンピューターシミュレーションでは、斑紋パターンによく似たパターンを作り出すことに成功したが、模様形成原理の推測にまでは至っていない。
|