研究概要 |
PC12細胞にKC1脱分極刺激やATPなどの受容体刺激を加えると細胞外からのCa流入が起こり,ノルアドレナリン(NA)分泌がおこることが報告されている。我々はこの刺激-分泌連関にプロテインキナーゼC(PKC)がpositiveに作用していることを明らかにした。すなわちPKCを活性化するホルボールエステルを共存させると,Caに依存したKC1やATP刺激によるNA分泌が相乗的に増加した。このホルボールエステルの作用は,カルホスチンCやH-7などのPKC阻害薬前処理や,PKCを欠損させた細胞では減弱していた。またcAMPを上昇させるVIPやアデノシンなどもNA分泌を増強した。これらの知見は,PC12細胞ではNA分泌がPKC系及びcAMP系両方によりpositiveに調節されていることを示している。 またG蛋白を活性化することが知られているハチ毒由来の活性ペプチドであるマストパランもNA分泌を促進した。しかしマストパランによるNA分泌はCa非存在下でも顕著に見られ,KC1脱分極刺激などとは異なっていた。これらの分泌反応に対し,百日咳毒素やrhoをADPリボシル化するボツリヌス毒素は無効であったが,長時間のコレラ毒素処理は分泌反応を減弱させた。 低分子量GTP結合蛋白ARFはコレラ毒素によりリボシル化されるであり,我々はARF蛋白そのものがマストパランと相互作用する知見をこれまでに得ている。今後,ARF蛋白が分泌に関与しているGTP結合蛋白Geである可能性をさらに検討する予定である。
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