研究概要 |
PC12細胞にKC1脱分極刺激やATPなどの受容体刺激を加えると,細胞外からのCa流入が起こり,ノルアドレナリン(NA)分泌が促進される。前年度において,プロテインキナーゼCの活性化や cyclicAMPの増加がこの刺激-分泌連関を増強することを報告した。PC12細胞からのKC1やATPによるNA放出は、百日咳毒素(PTX)処理により細胞膜のGiやGoをADPリボシル化した場合にも対照群と同程度見られた。これに対しコレラ毒素(CTX)処理した場合には,二相性の作用が見られた。すなわちCTX処理後1-2時間ではNA分泌が促進されまた各刺激によるNA分泌もさらに亢進していたが,処理後24時間以降ではcyclicAMP含量が高いにもかかわらず,KC1やATP刺激によるNA分泌は対象群に比べ有意に減弱していた。そこでCTX感受性蛋白が分泌に関与していると推定しさらに検討した。PC12細胞をKC1やATPで刺激した後,細胞をホモジナイズし遠心分離法により可溶性画分と粗細胞膜画分とに分画した。膜画分をCTX存在下で[^<32>P]NADとインキュベートすると分子量 45kDaの膜蛋白がADPリボシル化されるが,KC1やATP刺激した膜画分では,対象群から得た膜画分に比べ[^<32>P]ADPリボシル化量が2倍以上に増加していた。またCX自体の自己ADPリボシル化反応も増加していた。45kDa蛋白はGsのαサブユニットと同定されたが,イムノブロッテング法により測定した蛋白量には変化がなかった。この結果はCTXのADPリボシル化反応を促進させる細胞内蛋白として見いだされたARF(ADP-ribosylating factor)がKC1やATPで刺激した細胞の膜画分に多いことを示唆しており,低分子G蛋白ARFが神経細胞から伝達物質放出になんらかの役割たを果していることが推定される。
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