飼育サルにおける動物福祉の具体的な方策には様々な要素が考えられるが、本研究では1)索餌システム、2)遊具、3)ケージサイズの三要素について検討を行った。 1)の索餌システムでは、サル自身の操作によって採食できる操置を開発し、その効果を評価した。押しボタンによるエサ出し機はサルの順致も早く、採食時間も有意に延長したが、精密モーターを内蔵してごくわずかな軸出しを行う機置はやや高価なものとなり、基礎データの収集には役立ったが実用化にはコスト面の課題が残った。パズル餌箱は安価であるが、設定をクリアする能力には年令差が大きく、特に老令サルは複雑な課題は遂行できない個体が多かった。このことは逆に、行動面での老化の指標としてパズル餌箱によるテストが有効であることを示した(印刷済み)。 2)の遊具では、放飼場に設置した回転輪とジャンプボードがサルによく利用され、設置後1年を経過しても使用頻度が低下しなかった。サル自身の運動にもつながる種類の遊具が有効であることが示されたが、回転輪に利用する年令層に大きな偏りが見られ、雌雄とも5〜6才以下の若いサルにほゞ限定された。 3)ゲージサイズは、サル類の本来有する行動型を制限しないことを基本理念として、横臥や起立、転回などの自由を保証するサイズ案を、体格別に3クラスに分けて設定した。この案は他の実験動物種のサイズモデルと合わせて、96年度の日本実験動物学会大会に提示される予定である。
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