中国国民経済の基礎的構成単位をなす国営企業は、経済的機能を遂行するだけでなく、きわめて広範な社会的機能(住宅・医療・教育・社会保障の供与等)を果たしている。このような中国国営企業に特有な構造的性格を、経済改革との関連において考察することが、本研究の目的である。 そのために本研究者は、文部省在外研究員として中国・北京大学に派遣された折り、80項目に及ぶ独自の「中国企業状況調査表」を作成し、中国沿海地方(14都市33地点)の企業調査をおこなった。上述の研究目的および企業調査をふまえた上で、研究期間全体にわたる研究計画としては、 (1)調査票・テープ・ノート等在外研究時における研究成果・諸資料の翻訳・整理 (2)本研究課題に関連する自他の研究成果の整理・発展 (3)上記(1)・(2)をふまえた研究報告資料集の刊行を予定していた。 同時にまた、その後、財団法人太平洋人材交流センター(関西6自治体・財界等により設立)による、中国重慶市社会開発促進日中共同研究プロジェクトの日本研究委員会メンバーとして、中国における国有企業改革と社会保障・福祉システムの改革・発展のための提言づくりに関与することとなり、双方の研究を関連させ相互促進的に研究を発展させる機会を得た。 その結果、なお仮設的問題認識を含むとはいえ研究担当者の当初予測にあったとおり、中国の国営企業・事業単位は、「小共同体」企業・「単位体制」社会の構造を示しており、しかもその基本システムの改革は、中国経済改革の進行にとっていまや必須の課題となっていることが明らかとなった。 上述の作業課題(1)・(2)は基本的に完了し、(3)については現在準備中である。なお、それ以外に当初の研究課題と関連しその一環をなす研究発表がおこなわれている(裏面参照)。
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