研究概要 |
本研究の目的は,乱流状態にある初期太陽系星雲での,ダストの運動と成長を計算し,惑星形成の初期条件を明らかにすることにある.特に,ダスト成長を記述する上で重要なダストの合体割合を,「広がりをもった粒子法」による数値シミュレーションにより明らかにしようというものである. 本年度は,まず,一様等方な乱流運動をする星雲ガス中でのダストの成長方程式を定式化した.ダストとガスは,太陽を回る回転速度が異なるため,ダストは常にガスから抵抗を受けて,角運動量を失い太陽へと落下していく.また,ダストは互いに衝突し、合体成長する.そこで,太陽方向への落下と合体による成長との釣合で決まる,ダストの平衡サイズ分布を求めた.そして,乱流の強さとダストの合体割合とをパラメタとして,微惑星形成の条件や,ダストの射出する放射スペクトルを求めた.これから,ダストの成長により,放射スペクトルの近赤外部の放射率が下がり,系外惑星系円盤の観測で知られている「インナーホール」が説明できることがわかった. さらに,ワークステーションを購入し,学内ネットワークを介して大型計算機センターと結び,数値シミュレーションを行う環境を整備した.そして,ガスの乱流運動の流体シミュレーション・コードと,ダストの合体割合を求める「広がりをもった粒子法」コードとを開発した.そして,ダストの運動と衝突合体割合を定量的に求める計算を開始した.主として,大きなダスト(クラスター)に微小な球形粒子を衝突させ,運動エネルギーが内部運動にどのように分配されるかを調べた.それにより,ダストの破壊条件を見積もった.
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