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1993 年度 実績報告書

鉱物蒸発のカイネティクスと同位体分別およびその原始太陽系星雲への応用

研究課題

研究課題/領域番号 05833004
研究機関東京大学

研究代表者

高橋 裕子 (永原 裕子)  東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80172550)

研究分担者 圦本 尚義  筑波大学, 地球科学系, 助教授 (80191485)
森岡 正名  東京大学, アイソトープセンター, 助手 (20013766)
久城 育夫  東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80011526)
キーワード蒸発 / 真空 / カイネティクス / ガス / 太陽系星雲 / 隕石 / かんらん石 / メリライト
研究概要

初期太陽系星雲過程の高温過程における鉱物の蒸発、再凝縮によりもたらされる元素、同位体の分別を速度論的に求めるため、真空高温実験を計画した。
本年度はまず、炉の作成をおこなった。当初の計画ではタングステンメッシュ炉を購入する予定であったが,タングステン線をまいたものに変更した。炉、保温機構改善し、コントローラーの調整の結果、白金の溶融温度(1767度)で1度以内、金の溶融温度(1064℃)で2度以内でコントロールされるようになった。従来、このような高温においては10度程度の誤差があるのが普通であったので、この精度はきわめてよいものといえる。
これを用いてSiO_2の蒸発速度、同位体分別の測定をおこなった。出発物質は天然の石英単結晶で、実験条件では高温型クリストバライトに転移していると考えられる。実験温度は1700℃、試料はグラファイト製容器に保持し、容器は解放状態で、試料は真空に面している。真空状態に関しては、完全な排気状態、水素ガスを異なる圧力になるよう一定量流した2とおりの状態、の3つの場合についておこない、比較のため平衡状態の変化も調べた。その結果、蒸発速度は真空中、平衡、水素ガス中、の順に大きくなることがわかった。それら実験の産物の酸素同位体組成をレーザー加熱型質量分析計により測定した。その結果、同位体質量分別の程度は蒸発程度と逆に真空中、平衡、水素ガス、の順に小さくなることが判明した。これらの事実は、水素中においては蒸発速度が大きく、同位体質量分別はほとんどおこらないこと、真空中では蒸発速度が小さいので同位体質量分別が効果的におこることをあらわしている。
次に実験的に求められた蒸発速度係数、同位体質量分別係数、文献値による固体SiO_2結晶中の酸素原子の拡散係数を用いて、蒸発と同位体質量分別の関係を理論的に求めた。その結果、真空中では時間が短い間は拡散速度は蒸発速度より大きく同位体質量分別は効果的におこるが、時間が長くなると拡散速度が反応を律速するようになり、同位体質量分別はおこらなくなることがわかった。
これらの結果から、水素ガスからなっている原始太陽系星雲ではコンドリュール形成のような短時間の加熱では同位体質量分別はほとんどおこらず、真空中で加熱された場合のみ同位体質量分別がおこりうることが判明した。後者はある種のCAIのみに質量分別がみいだされることをうまく説明しており、原始太陽系星雲における固体物質形成過程はガス圧力に大きな差がある範囲においておこったことが判明した。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] H.Nagahara,I.Kushiro and B.O.Mysen: "Evaporation of olivine:low pressure phase relation of the olivine system and its implication for the origin of chondritic components in the solar nebula" Geochionica et Cosmochimica Acta. 58(印刷中). (1994)

  • [文献書誌] H.Nagahara,I.Kushiro and B.O.Mysen: "Vaporization and condensation of chondritic materials-experiments studies in“Primitive Solar Nebula and Origin of Planets(ed.Oya)" Terra Scientific Publishing Company, 677(427-446) (1993)

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公開日: 1995-02-08   更新日: 2016-04-21  

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