本研究では、主小惑星帯のうちではもっとも多いS型小惑星が、コンドライト的隕石種と対応するものであることを数種の新しい原始的エコンドライトの系統的鉱物分布変化より明らかにした。この特徴は、反射スペクトルの解析より明らかになった、S型小惑星の鉱物組み合わせの変化と同じ傾向であることを発見した。 4種の粗粒の隕石と2種の細粒でコンドライトに近い組織と組成を持つ隕石、2種のケイ酸塩鉱物包有物を含む鉄隕石について、既設の微小領域化学分析法であるエレクトロンマイクロプローブおよびX線蛍光分析法で分析し、2次元鉱物分布画像を得た。構成鉱物の化学組成は普通コンドライト(H)よりは少し鉄に乏しいものを持つ、ほぼ均質な粗粒のカンラン石、輝石、金属鉄、トロイライトなどの鉱物よりできているのに、その割合は場所により著しく異なることがわかった。とくに斜長石やオ-ジャイトなどのCa、Alなどの低溶融点鉱物の量は、0から22パーセント以上存在するものまで、著しい変化を示す。鉄隕石中にはこれらの鉱物がとくに濃集している部分を、始めて発見した。鉄、ニッケル、硫黄の低融点合金よりつくられる鉱物の分布も不均質であり、場所により著しく濃集した部分のあることを発見した。さらに、マイクロフォーカス蛍光X線法を用いてしらべた結果、これらの物質はcmオーダーで不均質に分布することを見出した。 これらの結果を総合して、鉱物組成の類似性と鉱物分布の不均質性は、母天体でのこれらの物質のcm〜mオーダーでの分布の差で説明でき、ある領域を加熱高温にし、部分溶融による低溶融点物質の溶融除去を行い、輝石、カンラン石に富む部分をつくり、そのまわりに移動し、結晶化するモデルで説明できた。このことは太陽系初期にはコンドライト的始原物質も、かなり物質進化をしたものであることを確実なものにした。
|