研究課題/領域番号 |
05833009
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土山 明 大阪大学, 教養部, 助教授 (90180017)
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研究分担者 |
永井 隆哉 大阪大学, 教養部, 助手 (20243131)
田窪 宏 大阪大学, 教養部, 教授 (80029678)
山中 高光 大阪大学, 教養部, 教授 (30011729)
松田 准一 大阪大学, 理学部, 助教授 (80107945)
植田 千秋 大阪大学, 教養部, 講師 (50176591)
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キーワード | 原始太陽系星雲 / 蒸発 / 硫化鉄 / 金属鉄 / フォルステライト / 元素分別 / カイネティクス |
研究概要 |
太陽系における惑星や隕石の形成時には、蒸発・凝縮作用が大きな役割を果たしたと考えられている。惑星を構成する物質の多くは、蒸発時にその化学組成が変化するような分解蒸発がおこるので、これに対応して多様な元素の分別がおこる可能性がある。地球型惑星を構成する主要元素は、Fe-S-H系とMg-Si-O-H系の2つの反応系に分けることとができるが、当該年度は主として前者の反応系について硫化鉄(FeS)の分解蒸発実験とその蒸発残渣である金属鉄の蒸発実験を行った。これにより、FeS結晶は分解蒸発するが、その蒸発速度は分解蒸発で一般に予想される放物線則ではなく、線形則に従うことが今回の実験で明らかになった。また蒸発に伴うSの同位体組成変化は認められなかった。一方、金属鉄の蒸発は予想されたように線形則に従い、その蒸発係数は1に近い値をとることがわかった。これらの実験データを原始太陽系星雲形成の力学モデルと組み合わせることにより、星雲における蒸発速度を推定した。原始太陽系星雲が降着円盤として活動期にある場合には、(1)蒸発のカイネティクスが重要な役割を果たすこと、(2)FeSの分解蒸発速度は遅いので分解蒸発はほとんどおこらず、太陽に近い高温領域で見かけ上調和蒸発することが予想された。この場合にはFe/S分別はほとんど期待されない。一方、Mg-Si-O-H系についてはエンスタタイト(MgSiO_3)の蒸発残渣であるフォルステライト(Mg_2SiO_4)の蒸発実験を行なったが、結果はまだ与察的な段階にある。エンスタタイトの分解蒸発実験は真空中で既におこなわれているが、今後H_2の多い原始太陽系星雲に近い条件で実験をおこない、これとフォルステライト蒸発速度のデータを組み合わせてFe-S-H系と同様の議論をおこない、原始太陽系の化学進化を明かにしたい。
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