研究概要 |
平成5年度の研究においては、Ni,Co,Mnの金属鉄-珪酸塩鉱物間の分配係数に対する圧力の効果の測定を1400℃の温度において行い、圧力の上昇とともにそれぞれの元素の分配係数が1に近づいてゆくことを明らかにした。本年度はNi,Co,Mn以外の元素、Cr,V,In,La,Tm,Scの金属相-カンラン石間の分配係数に対する圧力の効果の見積もりを試みた。本年度の測定結果によれば、Inは金属相に濃集し、Cr,Vはカンラン石中に濃集する事が明らかになった。また、La,Tm,Scについては、ほとんどがカンラン石中に入ることが明らかになった。これらの元素はNi,Co,Mnの様にFeとの交換反応が定義できないため、分配係数として組成依存性の大きいNernst分配を用いざるを得ない。本研究においては、圧力の上昇とともに珪酸塩相の組成が徐々に変化するため、現段階では確定的に結論できないが、これらの元素についても、圧力の上昇とともに金属相及びカンラン石に濃集するという特徴が弱くなる傾向が見られた。この結果から、昨年度のNi,Co,Mnの場合と同様に、Cr,V,In,Tm,Scについても圧力の上昇とともに分配係数が1に近づいて行くという可能性が示唆される。15EA02:以上の結果を総合し、地球型惑星において観測されている元素存在度と比較を行うと、小惑星のように小型で内部圧力の低い天体では、各元素ごとの分配係数の差が大きな条件下で核とマントルの化学平衡が成り立ったことを示唆している。一方、地球のような大型の惑星では、各元素の分配係数の差が小さい条件で核-マントルが化学平衡にある事を示している。この結果は本研究により示された各元素の分配係数に対する圧力の効果によって説明できる。
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