研究概要 |
彗星および隕石母天体における熱的進化およびこれらの天体を構成する物質の起源と変遷に関する理論的研究を行なった.今年度は以下の項目を目標とした. ●彗星核の熱史モデルを構築する.特に以下に述べるアモルファス氷の熱伝導率の新しい測定結果によって,意味をもつようになった長周期彗星の46億年にわたる熱史を明らかにする. この目標は完全に達成され,その結果は「11.研究発表」の雑誌論文Haruyama et al.1993として発表した.この論文では,アモルファス氷の熱伝導率の新しい測定結果を用いて,彗星核内部の経た温度の時間変化,彗星はどの程度始源性を保っているかを定量的に評価した.その結果,オールト雲の段階で彗星核はすでに熱変成を受けうることを定量的に示した.これは彗星核が太陽系の初期物質をそのままの状態で保存した始源天体であるとの,従来の定説を覆す結果である.この結果は海外の研究者にも大きな反響を起こしある. 上記の研究と関連して,アモルファス氷の形成条件と種々の天体における氷の結晶性に関する研究を行なった(Kouchi et al.,1994).この研究では,上記の彗星熱史の素過程の一つであるアモルファス氷の結晶化を一般論を構築した. 以上の研究に加えて,最近相次いで発見されたカイパーベルト天体の起源に関する研究(Yamamoto et al.,19934),星間雲内の水および一酸化炭素の氷についての研究(Tanaka et al.,1994),宇宙環境における有機物形成に関する研究を行なった(Kobayashi et al.,1994).
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