本研究成果をまとめると以下の様になる。 1.宮澤らが開発した化学発光-高速液体クロマトグラフ(CL-HPLC)法をさらに改良し、生体膜のホスフェチジルコリンヒドロペルオキシドとホスフェチジルエタノールアミンヒドロペルオキシドを数ピコモルの高感度に同時定量できるシステムを確立した。 2.本CL-HPLC法を用いて、ヒトの全胚由来正常二倍体細胞では、20PDL(細代培養回数)の若い細胞に比べ、老化による細胞死直前の50PDL細胞で、約80倍のリン脂質ヒドロペルオキシドが蓄積することを証明した。 3.ラットの加齢においては、リン脂質ヒドロペルオキシド蓄積の著しい臓器は肝臓(18カ月齢では1カ月齢の9・5倍)と脳(18カ月齢では1カ月齢の4.5倍)であることをはじめて明らかにすると共に、ヒドロペルオキシド蓄積のあった臓器組識では老化に伴い膜リン脂質自体の減少が顕著であることを見出した。 以上の新知見は、老化によって生体膜に過酸化脂質が多く蓄積することを世界ではじめて証明したといえる。
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