加齢に伴って末梢血白血球数、造血幹細胞・前駆細胞数の減少が見られる老化促進マウス(SAM-P/1)は、造血系老化研究のモデルとして有用である。今年度は、この加齢に伴う造血能の低下が造血幹細胞の老化によるものか、或は造血支持微小環境の老化を原因とするものかを明かにするために、老若マウス間の骨髄移植を行い、造血系回復のカイネティックスを調べた。 若齢マウスの骨髄細胞を移植されたマウスに比べて、老齢マウスの骨髄細胞を移植されたマウスでは、末梢血白血球数の回復に有意な遅延が見られた。造血幹細胞数・前駆細胞数に関しては、若齢マウスの骨髄細胞を移植したマウスより、むしろ老齢マウスの骨髄細胞を移植したマウスの方が早い回復を示した。一方、若齢マウスへの骨髄移植を行った場合に比べて老齢マウスへの骨髄移植を行った場合には、脾における造血前駆細胞(顆粒球・マクロファージ前駆細胞)数の回復に有意な遅延が見られた。 以上の観察結果は、造血系の老化は、造血幹細胞自体の老化によるものではなく、造血微小環境、特に造血幹・前駆細胞の分化を支持する脾間質細胞の機能低下によるものであることを示唆する。 しかし異系マウス(ddY)を宿主として骨髄移植を行った実験では、若齢マウス骨髄細胞を移植した場合に比べて、老齢マウス骨髄細胞を移植したマウスでは造血幹細胞による脾コロニー形成数が約半数となった。 これは、少なくとも異系骨髄移植拒絶反応に対する造血幹細胞の抵抗性には、加齢に伴う機能低下が起こることを示す。 なお、造血因子IL-6に関しては、加齢に伴う産生能の変動は見られなかった。
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