研究概要 |
申請者らは、これまでに老化促進モデルマウス(SAM)の赤血球細胞について、加齢に伴う変化を調べて、細胞内の抗酸化性酵素活性が低下し、酸化タンパク質レベルが上昇することが老化のパラメータになることを明らかにした。また、二次元電気泳動法によってSAMの血清タンパ質像を調べたところ、「未知タンパク質Y(24.8kDa,pI6)」が加齢に伴って顕著に増加することを突き止めた。 本年度は、申請者らがSAMについて確立した老化のパラメータを用いて、これに影響を及ぼす食餌性因子を検索するとともに、加齢に伴って増加する「未知タンパク質Y」を精製、同定を試みた。 まず、生体内で活性酸素を発生させるパラコート(200ppm)を摂取したときの赤血球および肝臓の抗酸化性酵素活性(グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ等)への影響を正常老化型マウスと老化促進型マウスについて調べたところ、これらの活性は両系ともにパラコート摂取により低くなった。血漿および肝臓のTBARS値、血漿・血球および肝臓の酸化タンパク質レベル、肝臓のDNA鎖の損傷率はパラコート食群で高値を示した。このような変化は正常老化型マウスより老化促進型マウスの方で著しかった。また肝臓DNA鎖の損傷率の上昇は同量のパラコートにBHT(300ppm)を同時投与すると、対照群のレベルまで抑えられることを示した。 老化促進型マウスの血清からタンパク質Yをイオン交換クロマト法、二次元電気泳動法により精製した。アミノ酸組成を調べたところ、顕著な特徴は見られなかった。また、N末端のアミノ酸配列および種々の酵素により限定加水分解して得られたフラグメントのアミノ酸配列の決定を試みた結果、タンパク質Yは既知のタンパク質の一部分である可能性が示唆された。現在のところ公表するに至っていないが、当初の予定どおり研究を進めている。
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