研究概要 |
昨年度までの研究において、ジャスモン酸およびジャスモン酸メチルエステルはゴガツササゲ(Phaseolus vulgaris L.cv.Masterpiece)第一葉葉柄切片の離層形成を促進することが明らかとなった。この場合、ジャスモン酸は離層部近傍の葉柄側および葉枕側細胞の細胞壁構成多糖、特にセルロース含量を低下させた。また、ジャスモン酸によって離層形成が促進される場合、細胞壁多糖の重要な合成基質であるUDP糖量の低下が促進された。従って、ジャスモン酸類は細胞壁多糖の分解と合成とに関与する諸酵素の動態に影響し、離層形成を促進することが示唆された。 細胞壁分解酵素であるセルラーゼはゴガツササゲ芽生えのいずれの器官にも存在することが示されたが、第一葉葉柄部および葉枕部において高活性であることが明かとなった。セルラーゼ活性の検出方法は、カルボキシメチルセルロースの粘度を指標とする粘度法、カルボキシメチルセルロースを基質とした場合に遊離する還元糖を定量する方法、さらにセルラーゼ、グルコースオキシダーゼおよびパーオキシダーゼをカップリングさせ、最終的に3,3-diaminobenzidineの褐色を比色測定する活性染色法について検討した。これらのうち、本研究においてはセルラーゼ処理により遊離する還元糖を定量する方法が最も優れていた。 外生的にジャスモン酸を投与した場合、ゴガツササゲ第一葉葉柄部および葉枕部のセルラーゼ活性が著しく上昇した。離層形成に阻害的なオーキシンはこれを低下させた。タンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドをジャスモン酸と同時にゴガツササゲ芽生えに投与すると、セルラーゼ活性が低下することから、ジャスモン酸によって上昇したセルラーゼ活性は新たに生合成されたセルラーゼに基づくものであることが推察された。 ゴガツササゲ葉柄、葉枕部に存在するセルラーゼに対するポリクローナル抗体を得る目的で、部分的に生成したセルラーゼおよび比較のためのAspergillus nigerより得られたセルラーゼ標品を用いてウサギに免疫し、抗体価を経時的に測定したところ、著しい抗体価の上昇は認められなかった。
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