研究概要 |
私たちは,SV40 T抗原遺伝子を導入したヒト二倍体線維芽細胞MRC‐5から複数の独立な不死化細胞クローンを得,これらの細胞クローンについて現在までに以下のような研究を行なった。 【.encircled1.】細胞不死化は,細胞老化のあと死滅するクライシスの時期に何らかの変異が生じて出現することを明らかにした(Mech.Ageing Dev.,69:149,1992)。 【.encircled2.】Type I Collagenase遺伝子(以下COL遺伝子と略)の発現が細胞老化の過程で劇的に上昇し,不死化細胞ではCOL遺伝子の発現がほぼ完全に消失することを報告した(Biochem.Biophys.Res.Commun.,189:148,1992)。 【.encircled3.】COL遺伝子の約1.7kb上流に2カ所のcis‐acting regulatory elementsを見い出し,これらのelementsに結合する3種類の新規な転写因子を同定した。不死化細胞では88kDaの転写抑制因子Orpheusが優位に結合して働き,転写活性化因子Plutoはほとんど結合せず,逆に,細胞老化期の細胞ではPlutoが優位に結合して働くことを明らかにした。(Mol.Cell.Biol.,in press,1994;1993年12月日本分子生物学会シンポジュウム「老化と細胞死」にて発表)。 【.encircled4.】Plutoの候補としてNFAT familyの新しい遺伝子をクローン化した(未発表)。 【.encircled5.】Plutoの結合部位のごく近傍に結合部位をもつOrpheusについては,厚井照美博士(La Jolla Cancer Institute)がMAR/SARに結合して核マトリックス構造を作り,転写抑制に働くと報告したSATB‐1と極めてよく似ている。Southwestern blot法によってcDNAをクローン化した(未発表)。 【.encircled6.】不死化細胞クローンでは第5番および第10番染色体が消失または欠失していることを報告した(斎藤深美子他,日本人類遺伝学会にて発表,1991および1992)。
|