老化における活性酸素の役割を調べるために、C.elegansから活性酸素に対する耐性遺伝子の分離と、酸素に高い感受性を示す突然変異体を分離した。この耐性遺伝子を酸素高感受性突然変異体に導入しその役割を調べた。 結果は、 1.マンガン-SOD遺伝子を分離し、塩基配列を決定した。 2.mev-1と名付けた突然変異体は寿命が酸素濃度に依存して変化し、さらに銅、亜鉛SODの活性が野生株の半分以下であるが、老化の指標となる自己蛍光物質(リポフスチン)がmev-1では野生株よりも早期に出現し、特に高濃度の酸素下ではそれが顕著に現われることから、mev-1が酸素に関わる早老症であることを示した。 3.銅、亜鉛SOD遺伝子(sod-1)は第1染色体上に存在することが知られていたが、最近になり第3染色体に位置する新しい銅、亜鉛SOD遺伝子(sod-4)が見いだされ、mev-1がSOD遺伝子そのものである可能性が出てきた。しかしながらRT-PCR法では野生株とmev-1との間にはこの遺伝子の発現量の違いは見られなかった。この遺伝子の働きを調べるために、上流2kbと下流1kbを含む野生型のsod-4遺伝子をmev-1に導入し、酸素感受性と寿命の変化を調べているが、酸素耐性を示す虫はまだ得られていない。 4.さらにもう1つの酸素感受性突然変異体、mev-3、を分離し、酸素濃度に依存した産卵数の減少や成長の遅れ、さらに寿命短縮を示すことを見出した。トランスポゾンをマーカーとしてこの遺伝子クローニングを試みているが、常にmev-3と連鎖するトランスポゾンを見いだしたので現在その分離を行なっている。
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