本年度は凍結-融解によって破砕されやすい岩石試料として、栃木県大谷産の凝灰岩を選び、その物理的性質を実験的に求めた。とくに、新しく国立東京文化財研究所が開発したシリコン系合成樹脂(SS-101、メチルエチルトリキシシラン)を塗布し、その結果岩石表面に吸着した水分量の変化を、あらたに研究所に導入されたパルス型NMRで測定した。凍結時に岩石内で破砕が発生するのは、土の凍上現象と同じように、0℃以下でも液体状態の水(不凍水)が存在しているからである。凍結時に発生する試料内の温度勾配に沿って、この不凍水の化学ポテンシャル勾配が発生する。そのため、より低温側でポテンシャルが低くなるために水分輸送が起こり、岩石内の氷の形成とそれに伴う凍上力が岩石の力学的強度を超えると破砕が発生する。こうした破砕のメカニズムを確認するため、シリコン系樹脂で表面構造を変化させ、それを定量的に把握するためにパルス型NMRによる実験を行った。結果はおおよそ予想通りで、樹脂含有量の増加に伴い不凍水分量は現象した。 さらに凍結時に発生するクラックとその発生時温度を知るためにアコーステックエミッシオン(AE)の測定を行った。岩石内2cm位置で氷の集積が確認されたが、その際に200-500cpmのAEを観測した。この時の推定凍上力は1.4MPaで、岩石の引張り強度にほぼ等しくなった。以上の結果をGround Freezing誌へ発表した。小樽市手宮洞窟などの現地調査も併せて実施した。
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