油脂のガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いた分析のために、キャンバスに自家製の油画具を塗布して乾燥させた標準資料を作成した。まず手始めに、従来よく用いられているアルカリでケン化後ジアゾメタンメチル化によりGC-MSでの分析条件の設定を行った。ついで有機アルカリ(TMAHまたはm-TFPTAH)を用いて同一試薬による、ケン化とメチル化処理を試みた。検討の結果後者の試薬が適していることが明らかとなった。 乾燥した油画具試料片に液体の有機アルカリ試薬を加え、約70℃で加温する。超音波洗浄器で試料を良く分散させ十分にケン化反応を進める。フィルターで顔料を濾過し、GC-MSの試料とする。注入口温度を300℃に設定し、注入口でメチル化反応を行わせる。ジアゾメタンメチル化法との比較の結果、油の種類を同定するために用いられているパルミチン酸(P)とステアリン酸(S)の比の測定には十分利用できることが明らかとなった。操作が簡便でしかも試料のロスが少ないので、微量の試料での分析が可能となる。来年度はさらに他の脂肪酸の量比も含めて、種々の油試料について再現性の検討を行い、本方法を確立したいと考えている。 アミノ酸分析については分析点数を増やした。既に得られている結果をも含めて、タンパク質の同定のための統計的処理手法を、来年度は検討する予定である。 以上の研究成果は6月の学会で発表する予定である。
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