研究概要 |
平成5年度に重点的に測定を実施した姶良Tnテフラ(AT)の他に,大山倉吉テフラ(DKP),阿蘇4テフラ(Aso-4),三瓶木次テフラ(SK),阿多テフラ(Ata)からも試料を採取し,その残留磁化と帯磁率を測定した。全国17府県の52地点で採取した約2.5万間年前に噴出したAT試料についての測定は終了し,2.5万年前の磁気図を作成することができた。現在,「第四紀研究」への投稿準備中である。第1近似として,全測定結果の平均値から求めたVGP(仮想磁極)を当時の磁極の位置として作成した磁気図からは,約2.5万年前の日本列島における地磁気偏角は全体として東偏(東北で10°E,九州で8°E)している。この第1近似で求めた磁気図と,各地点での測定結果を比較すると,岡山県のデータが数度西偏しているのが目立つ。また,富山県では伏角が数度深くなっている。これらのずれは,非双極子成分による局地異常を示している可能性が高い。このような研究結果から,広域テフラで磁気図を作成することにより,地磁気永年変化を考える上で重要な要素となる局地異常について議論できることが明らかになった。 DKPの10地点,SKの6地点,Aso-4の2地点,Ataの2地点の測定データが新たに得られたが,まだ磁気図を作成できる段階ではない。 約5万年前のDKPの残留磁化は,噴出源に近い鳥取県では不安定であったが,噴出源から離れた福井県以遠で安定な残留磁化が得られた。ATとは異なり西偏していて,現在の地球磁場とほぼ同じ方向になった。DKPは一般に変質が進んでいるため,この安定な磁化方向も化学残留磁化などの二次磁化である可能性があり,今後岩石磁気学的な検討を進める予定である。 広域テフラの全ての試料について帯磁率を測定した。その結果,噴出源に近いほど帯磁率が大きくなるという興味あるデータが得られた。このような帯磁率測定データは,広域テフラの堆積環境を考察するための重要な基礎データになると思われる。
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