研究概要 |
アミノ酸ラセミ化年代測定法は、動物骨、貝殻、有孔虫などの化石を測定対象とした相対的な年代測定法であるが、放射性炭素法では測定精度が低下すると言われる1000年以下や50000年以上の年代領域が測定可能であり、また微量サンプル量(10-100mg)で事足りるなどの長所を有している。本法は、ほかの年代測定法とのクロスチェックなどにもよく用いられる。ところが、本法は、試料処理過程が煩雑で長時間を要するために、一定時間に処理できる数が限られ、また繰り返し精度もあまり高くはない。 我々は、操作過程をより簡素化し、ステップ数を減らせば、精度の向上につながると考え、化石試料中に含まれるタンパク質を加水分解した後、イオン交換精製などを省き、直接に誘導体へと導く方式について検討した。誘導体化試薬としては、水分が残留していても反応が進行するアルキルクロロフォルメートを選択した。サンプルは最終的にはピリジンを少量加えて弱アルカリ性にし、エチルクロロフォルメート、イソプロピルクロロフォルメート、イソブチルクロロフォルメートなどの誘導体化試薬を用いて直接誘導体化について検討した。その結果、アスパラギン酸はどの誘導体に導いてもD,L分離できたが、抽出効率、検出感度を考慮するとイソプロピルクロロフォルメートが適当であることがわかった。光学分割に用いる固定相としては、数多くのものを合成し、検討したが、Octakis(6-O-t-butyldimethylsilyl-2,3-di-O-acetyl)γ-cyclodextrinをコーティングしたキャピラリーカラムが良い結果を与えた。なお、繰り返し精度については今なお検討中である。
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