研究概要 |
縄文時代の大型植物化石群の情報を集成し,再検討し,一部新しい情報を付け加え,これを基礎に植物相ならびに植生が縄文時代を通じて時空的にどの様に変化したかを明らかにする。一方,ヒトが関与して形成された化石群資料を用いて、縄文人の堅果植物食の時空的分布を復元する。以上を総合して縄文人の堅果食糧の選択について検討する。以上の研究目的のために今年度行なった研究の主な成果はは次の通り。 (1)近畿地方から北陸地方の資料について再検討した。縄文時代後晩期については植物相の地域性と堅果食の地域性が明らかになった。すなわち,植物相と堅果食の関係は次の通り。大阪,神戸:照葉樹種主体の森林-イチイガシ食中心,京都市,滋賀,舞鶴:カシ類主体で谷には落葉広葉樹の森林:イチイガシ,トチノキ食中心,金沢:落葉広葉樹林:トチノキ,クリ食中心。近日中にとりまとめの予定。 (2)堅果食の民俗例の実際,シイノキの地理的変異の確認のため,奄美大島で現地調査を11月中旬に実施した。戦後から現在にかけての民俗事例を検討した。結果は近日中に取りまとめの予定。 (3)近畿圏以外の各地の資料の収集,再検討を実施。 (4)クリの堅果が大型化する様子をまとめた。早期は野生種と区別できず,前期・中期に大きくなり初め,後・晩期には現在の栽培種に匹敵する大きさとなる。以上については論文とした。 今後の予定では,さらに全般的な資料の集成につとめるとともに,地域としては東北地方と山陰地方,分類群はシイ属とイチイガシに注目して検討を進める。
|