研究概要 |
出土木材を水中保存するための試験環境を設定し,微生物同定と材質試験の予備的な実験を行った。その結果,試験環境として屋外と屋内の2カ所を設定した。屋内については,さらにコンテナ中と岡田が開発したパック中の2条件を設定することとした。これらの試験環境のうち,屋外環境下では,種々の水棲生物(昆虫)の存在が確認され,微生物の発生が充分に推測された。一方,屋内とパック中においては,明瞭な変化は今のところ認められていない。また,長期間,水中保存されていた材を走査型電子顕微鏡で観察したところ,腐朽菌の菌糸とバクテリアの存在が確認された。 出土木材は,その劣化が決して一様ではないこと,ならびにその劣化程度を実験前に把握することが困難である(非破壊的に材質を調査することが困難である)ことから,実験結果の再現性と普遍性に問題を有している。これらの問題については,以下の2つの方法により解決したいと考えている。すなわち,1)試料の数をなるべく多くとり,得られた結果を統計的に整理する,2)出土木材の細胞壁の密度を1.35-1.55g/cm^3として,浮力法により最大含水率と容積密度を測定し,劣化程度の尺度とする,という2点である。材質試験のうち,強度試験としては,試料を比較的調製しやすいことから縦圧縮強さの試験を行うこととした。成分分析は,リグニン,セルロースならびにヘミセルロースの主要成分とアセチルブロマイド不溶成分(腐植成分と仮定)を定量し,さらに糖組成分析を行うこととした。縦圧縮強さは劣化の進行とともに低下すること,およびそれに対応する成分組成の変化が確認された。
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