超臨界流体として安全性の高い二酸化炭素を用いた。二酸化炭素と水は相互溶解度が小さいので、まず試料内の水をエタノールで置換し、次いでエタノールと二酸化炭素の双方に可溶な酢酸イソアミルで置換する前処理が必要となる。この前処理の簡略化について検討したが、この前処理は不可欠であることが確認された。本研究では、前処理における薬剤(エタノールと酢酸イソアミル)の含浸速度、超臨界流体の試料木材への含浸速度について検討した。さらに、収縮率を測定し、自然乾燥の場合と比較、検討した。 薬液の含浸はいずれも拡散モデルに従うことが分かったので、有効拡散係数を求めた。エタノール含浸系の場合、有効拡散係数は分子拡散係数の44%であった。酢酸イソアミルの場合の有効拡散係数はエタノール系の場合とほぼ同程度であった。従って、25℃では、両者の有効拡散係数は0.30cm^2/dayとなる。超臨界二酸化炭素中の酢酸イソアルミの分子拡散係数の推算値は11.5cm^2/day(25℃)であったので、エタノール系の場合と同様に、有効拡散係数は分子拡散係数の44%として5.06cm^2/dayとした。以上の結果を用いて処理時間を推算しPEG含浸法の処理時間と比較したところ、本法の所要時間はPEG含浸法の約1/4であることが分かった。 収縮率は体積収縮率にして最大で約20%であった。従って、等方性を仮定すると、長さの収縮率は7%以下になり、これは自然乾燥の場合の1/4以下である。また、自然乾燥に比べると木肌の明度も明るくなり、自然な質感が得られた。
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