研究課題
1.実施した調査研究内容東京国立博物館保管の法隆寺献納宝物、小倉コレクション、考古遺品の中から6から9世紀の朝鮮半島系と考えられる金銅仏・仏具・調度品・文房具・鏡鑑などの金工品を対象として以下のように調査研究を行なった。すなわち、(1)作品の科学的分析(2)作品の調査(3)関連遺品の調査(4)資料写真の作成・整備、(5)文献資料など関係資料の収集整理(6)研究総括である。新たに得られた知見(1)今回調査研究対象とした作品をa.蛍光X線分析法(ブロンズ-青銅-の科学組成分析)、b.鉛同位体比測定法(ブロンズの主成分である銅の産地推定)の科学的分析法により測定し、各作品ごとデータを収集した。その結果、aの蛍光X線分析からは、従来その科学組成が不明確であった白銅、佐波理(響銅)および鍮石製品の材質に関する具体的なデータがあきらかとなり、またbの鉛同位対比測定からは、とくに金銅仏の産地推定に重要な手がかりとなるデータが得られた。(2)各作品に対して行なった詳細な調査(肉眼観察に加えてgamma線立体透視写真撮影やスーパー・アイ、実体顕微鏡なども援用)により、金銅仏や水瓶、鋺、柄香炉など仏具類の制作技法解明に関する具体的かつ客観的なデータが得られた。(3)上記の(1)、(2)で得た知見を総合的に分析した結果、今回の調査研究対象作品(すなわち東博保管の古代朝鮮系銅製品)の材質と制作技法は、制作地および制作年代と密接な関連性を有していることが認められた。なお今回の調査研究では、対象としたすべての作品に関して綿密な制作地・制作年代を考定するまでにはいたらなかった。この点は今後の課題としたい。
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