エミシオグラフイは、被写体に含まれる重元素が一次X線を受けて発生させる二次電子(光電子)で、顔料や象嵌などの画像を撮影する方法である。発生する二次電子の量はごく微弱で、方向性がないので、撮影時には次の二点に注意を要する。 (イ)発生する二次電子が微弱なので、フイルムをカセットや袋に入れて撮影することはできず裸のフイルムを用いる。このために、撮影は暗室中で行う。 (ロ)発生する二次電子は四方に広がるので、フイルムと被写体の間に隙間ができると、ぼけた像ができる。このために被写体とフイルムを良く密着させて撮影する。 凹凸面に象嵌のある文化財にエミシオグラフイを応用する際の問題点について検討し、適当な方法を考えた。象嵌のある面が平らでない場合、硬いフイルムでは密着しにくい。このため、柔らかい弾力性のある透明シートに写真乳剤を吹き付けて使用してみたが、次のような問題点があった。 (イ)シートが柔らかいと撮影後の焼付けが難しく、ガラス板にはさむ必要があって、取扱がやっかいとなる。 (ロ)吹き付ける写真乳剤が印画紙用なので、低感度で特に象嵌のように細い線からの微弱な画像が得にくい。 以上の点を考慮して、絵画の撮影に用いるフイルム(写真製版用)を適当な大きさに切って、上から押え、あるいは可能な場合には減圧して密着させて、撮影することとした。この方法で撮影した場合、何枚ものフイルムを合成しなければならないので、画像合成の方法について現在検討している。
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