本年度はまず、静岡県浜松市の角江遺跡を対象に、その縄文時代晩期から中世にいたる各時代の植物遺体を収集した。当初予定では、発掘の進捗に合わせて新しい時代から古い時代へと解析を進める予定であったが、発掘が早く進行したため採集は分析に先駆けて行った。 中世の遺体は稲の籾と思われるサンプルで、粒形からは現在の品種とはほぼ同サイズ、同型の品種と考えられた。このうちの数粒からDNAが抽出され、その増幅パターンからすべての籾がジャポニカに属するものと判別された。 弥生時代および縄文時代のサンプルはほとんどが樹木で、河川(自然流路)中に堆積した流木等であった。一部は取水口を設営するため加工された材木とも考えられた。なお年代は、土器の他、大沢スコリアをはさむ地層によって確認されており、その信頼度は高い。これらの遺体からDNAを取り出す作業は現在進行中である。 樹種鑑定のため、あらかじめ種がわかっているサンプルからDNAを抽出し、増幅されたDNA断片の電気泳動パターンによって種固有のバンドを検出するという方法を採用した。現在のところ、スギ、クス、サクラ、カシなどに固有のバンドを得ている。
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