研究概要 |
本年度は,今までの研究成果をとりまとめるとともに,青森県三内丸山遺跡出土のクリの分析を行った. 1.曲金北遺跡(静岡市)出土の水田遺構について. 同遺跡から検出された水田100枚から土壌を採取し,水洗して種子などを種子などをカウントした.水田面からは多量のヒエかアワの種子のほか木片が発見された.この種子の種はあきらかにすることができなかった.検出された種子の量あや種類などの不斉一さからみると,水田間にはその微環境に大きな差異のあることがうかがわれた.おそらく100枚の水田のすべてが同じ時期に一様な栽培環境のもとで稲作に使用されていたわけではないのであろう.前年度に行った角江遺跡(浜松市)の分析結果などを併せて考えると、縄文から弥生時代の環境は極めて大きな種および生物多様性を包含していたことがわかる。おそらく栽培の進歩が多様性を減少させたのであろう。 2.青森・三内丸山遺跡出土のクリについて. 同遺跡出土のクリの子実20個からDNAを抽出し,子実間の多様性を調査した.2つのランダムプライマーによって増幅されたDNA断片のうち,サザン法によってクリのDNAと判断された断片像の有無に基づいて,集団の遺伝的多様度を調査した.多様度を表わすH値(平均遺伝子多様度)は20子実の間で0.22程度となり,木本の自然集団の遺伝的多様度と比べて明らかに小さかった.同遺跡ではクリ子実が栽培されていた可能性が高い. 3.本年度はまた,北海道・大川遺跡,愛媛県・文京遺跡などで出土した炭化米からDNAを抽出し,PCR法で増幅させることにより品種の判定を行った.現在までのところ,日本で出土しているすべての種子がジャポニカに属することがわかった.
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