研究概要 |
平成5年度の微差分型ニューラルネットを対象とした基礎研究を通じて,申請者は「カオス的時系列データのみから,これを生成した未知力学系と等価な非線形写像の係数族を推定することが可能である」という特筆すべき結果(分岐図再構成法)を得た 提案した手法の基本的な道具だては,大域的滑らな決定論的非線形予測子(多層パーセプトロン)の多係数族と特異値分解(主成分分析)であり,対象とする未知力学系の係数を予測子の多自由度係数空間の中で捕え,これらを拘束する部分空間を特異値分解によって抽出・記述することで予測子係数における冗長性を排除する.この結果,異なる係数値に対応する複数のカオス的時系列データのみから,未知力学系の分岐係数を定性的に推定することが可能となり,真の係数空間における分岐構造と位相的に等価な分岐構造を推定・再構成できる.提案した手法は,外部環境の変化に伴って様々な発振現象を起こすカオスセンサーのための認識系構築,また種々の非線形動力学系のモデリングやシステム同定に適用可能である. 現在、分岐図再構成法はエノン写像族等の低次元差分力学系に対して適応され,その有効性が確認されている.この結果は,既に国内外の学会や雑誌などで発表され,工学を越えて数学・物理学の多くの研究者から反響を得ている.他方,時間連続系への拡張に関しては研究が進行中であり,平成6年度内に完了する予定である.
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