研究課題/領域番号 |
05836007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 道夫 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (90166736)
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研究分担者 |
林 祥介 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (20180979)
大木谷 耕司 京都大学, 数理解析研究所, 助手 (70211787)
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キーワード | ストレンジアトラクター / 高次元カオス / スケーリング則 / 確率密度分布関数 |
研究概要 |
本年度はスケーリング則を持つ微分方程式系として我々が提出したモデル(シェルモデル)を採用し、その変数の確率論的性質とそのスケーリング依存性を調べた。このモデルは、流体乱流におけるフーリエモードを想定した54個の変数からなっており、「慣性小領域」に相当する変数には「コルモゴロフスペクトル」に対応する顕著なスケーリング則が見られ、各変数毎の確率分布関数は「高波数」の変数になるほど正規分布からはずれflatnessが大きくなることを既に見いだしている。ここではこのモデルにおいて特に、粘性効果が現れエネルギー散逸が激しい「散逸領域」に注目しこの領域に対応する変数の確率分布関数を調べた。 その結果まず、「散逸領域」の中でも比較的「低波数」の部分では、「慣性小領域」における確率分布関数の変形の傾向の延長上にあり、正規化された分布関数P(χ)はχが大きなところでべき則よりも急峻な関数形をとることを確認した。さらに、より「高波数側」の変数については、分布関数形はあるχの値χ_cを境にしてχ<χ_cではべき則が現れることが見いだされた。このχ_cは変数の対応する「波数」がより高くなるにつれ大きくなり、ついにはべき形P(χ)=C_χ^<-1.6>が全領域を支配するに至ることが分かった。 これらの結果は、スケーリング則をもつ高次元のストレンジアトラクターにおいて、「アトラクターの内部」の変数の確率分布関数が正規分布あるいはstretched指数分布程度の減衰を示すのに対して、「アトラクターの外部」の変数の確率分布がべき分布となり遥かに大きな確率でlarge deviationを生じることを意味している。
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