化学振動反応としてベローゾフ・ザボチンスキー反応を使用し、触媒を含む臭素酸塩、硫酸、マロン酸の混合水溶液を用いた。この触媒がセリウム(IV/III)塩、鉄錯体(III/II))、ルテニウム錯体(III/II)の場合には振動挙動、すなわち、誘導時間、振動の持続時間、電位差変化の様子、振動の終わり方などに特徴が見られた。特にルテニウム錯体では赤色-緑色の時間振動を行うが、紫外線照射により蛍光を伴う振動反応が見られた。電位差変化から活性化エネルギーを測定して両者を比較した。 熱量測定は熱交換方式によるフロー形式カロリメーターを自作した。溶液の流入量と反応槽内の滞留時間に依存する装置定数の理論式を求め、流速範囲0-30cm^3/minに対する実験値と比較したところ好結果を得た。さらに、フロー形式における数J-数10J程度の発熱量についても満足すべき再現性が得られた。 このカロリメーターに通常の電気化学測定と同様の電位差測定部分を組み込み、熱量と電位差の同時測定を行った。まずフロー形式の実験で振動挙動の追跡を行い、次いで作製したカロリメーターをバッチ形式の測定に使用した。既報のバッチ形式カロリメーターの実験結果と比較したが、何ら問題はなかった。振動反応に必要な化学物質相互の濃度関係と振動挙動はケモメトリックスによる解析から最適条件を選択した。 上記の検討後、本研究の目的とする外部から電気化学的制御を加えたときの振動挙動への効果を調べた。溶液の撹はん速度が振動挙動、特にカオスに大きく影響するという報告がいくつかあるが、ここでも物質の濃度依存性と撹はん速度に大きく依存する結果を得た。化学振動反応は溶液中の物質移動を可視化するものと考えるが、微妙な実験条件とその結果の関係を理論的解析に発展させるために実験値を可視化情報として電子化する試みも行い、次のステップへの足がかりが得られた。
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