円柱自身を流れ方向に振動させカルマン渦列に撹乱を加えると、円柱の振動条件によって、渦列は三次元的な構造を伴い、きわめて秩序性の高い構造からカオス的な構造を含む7つの型に分類できる。この多様な渦列構造の移行は、円柱の振動数Fcと渦放出周波数Fvにもとずく変動が、非線形干渉する経過であると解釈できる。秩序性のきわめて高い渦列(N型、P型)の発生するFcの帯域に、隣接する2つのFcの帯域で、カオス的な渦列が発生する。このカオス移行は、FcとFvに基ずく渦構造が競合する不安定な状態のもとに発生すると考えられる。円柱の振動数を突然変える周波数変調時に、他の型の渦列が、秩序性の最も高いN型あるいはP型に移行するまでに要する時間を測定した。カオス的な渦列には、多様な渦列構造が含まれるので、カオス型の渦列からの移行時間が、最も短くなることを予測したが実証されなかった。むしろ、この移行時間は、流れ方向に軸を持つ縦渦の存在に大きく依存する。縦渦を含む場合は周期的な縦渦を含むN型への移行が、縦渦を含まない場合はスパン方向に一様な渦列のP型への移行が短時間で達成される。また縦渦を含むN型から他の型への移行には、いずれの場合もヒステリシスがある。これに対して縦渦を含まないP型の場合は、N型への移行以外にはヒステリシスが認められない。円柱背後の渦列の存在形態は、上記の実験結果にもとずき、円柱の振動条件を変えて、アクティブにコントロールできるが、カオス的な渦列構造を積極的に利用したコントロールは、円柱の振動周波数の変調モードのコントロールが不十分なため、有意な結果が見られなかった。今後の課題としたい。
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