本研究の目的は空間2、3次元の孤立渦解や孤立波解をもつ非線形長波方程式を取り上げ、高次元ソリトンの可能性およびソリトン方程式の高次元化に伴う可積分性の破れの問題などを考察することである。本年度は2次元孤立波解の相互作用の数値実験によって局在構造(局在ソリトン)の相互作用を調べることおよび散逸性や不安定性を考慮した空間高次元の長波方程式におけるソリトン相互作用とカオス的な現象に関連する問題を調べた。本年度に得られた主な結果は以下のごとくである。 1.非線形ロスビー波方程式の双極子型孤立渦解(モドン解)の相互作用と安定性を調べた。傾いて伝播するモドン解は進行方向によってその安定性を異にするが、渦糸対のモデルを拡張した多重極展開の方法によって傾斜モドンが構造不安定となることを明らかにした。 2.空間2次元の非線形長波方程式であるサハロフ・クズネッツオフ方程式や正規化長波方程式に不安定性や散逸性のような非保存的効果が加わった形の非線形方程式の基本的な性質を調べた。また、このような形の非線形方程式が液膜流のみならず気泡流、液滴流、粉末流などの混相流体における不安定波動や多孔性媒質におけるマグマの運動などの近似方程式となっていることを多重スケール展開法によって示した。
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