研究概要 |
はくちょう座X-1星や活動銀河核など、ブラックホール天体からのX線強度の短時間変動にみられる1/fゆらぎの、自己組織化臨界現象の考え方を用いた新しいモデルを提唱し、その性質を調べた。ブラックホールをとりまくガス円盤を二次元計算メッシュでおおい、ガスをランダムにガス円盤へと注入していく。ガスの量がある臨界量を越えたところで何らかの形の不安定(物理は特定しない)がおこると仮定し、不安定領域にあるガスは、なだれとなって一気にブラックホールへと落ちていくとする。その際ガスはポテンシャルエネルギーを解放し、そのエネルギーが全てX線放射として系より出ていくと仮定することにより、X線の時間変動を計算することができる。しかしながら、こうして計算されたパワースペクトルのべき(周波数fの-1.8乗)は必ずしも観測と一致しなかった(発表論文:Mineshige,Ouchi&Nishimori 1994)。そこで円盤粘性によるガス拡散の効果をも採り入れ、モデルをたて直した。こうして完成された新しいモデルは、パワースペクトルのべき(周波数fの-1.5乗)のみならず、X線ショットのピーク強度分布や、ショットの間隔分布についても、観測結果をみごとに再現した(発表論文:Mineshige,Takeuchi & Nishimori 1994;Negoro et al.1995)。ところで自己組織化をおこす不安定の種として磁気フレアを考えると、ブラックホールをとりまく円盤の構造は、光球+コロナという、従来考えられていたようなモデルでは説明できない。そこでわれわれは、円盤全体がコロナとなったような、新しいモデルを提唱した(発表論文:Mineshige, Kusunose & Matsumoto 1995)。
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